第89回 命とお金どちらが大事?2025:03:09:22:25:44

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

どういうつもりで、特定の薬剤の名前をあげ、高額医療費の引き上げを主張しだしたのか分からない。医療費の見直しなら、ほかにいくらでも手段はあるはずだ。恐らく、高額医療費が目立つからだろうという印象しかもてない。

免疫チェックポイント阻害剤が高額であることは、オプジーボが登場したときにいわれていたことだが、同種の免疫療法がいくつかでてくるなど普及し、現在は「高額だ」という批判は鳴りを潜めていただけに、いまさら何を言っているのだろうという違和感がある。
また、高額医療費のひきあげについて、国会では、受診控えの恐れが論点になっているが、
そのことにより、近年進展が目覚ましいがん医療を阻害する恐れもある。

たとえば、免疫チェックポイント阻害剤は、これまで治療が難しかった肝臓がんの治療に新しい道をひらいた。手術が難しい進行性大腸がんの治療では、特定の遺伝子変異に対して、
免疫チェックポイント阻害剤が奏功して、治癒するケースも確認されている。これらは、もちろん、免疫チェックポイント阻害剤の効果を示す事例の一部にすぎない。だいたい、そもそも、がん治療の方法として、こうした大きな可能性をもつからノーベル賞の対象になったのではなかったか。

残念ながら、こうしたがん医療の進展への懸念を示した国会の議論はない。いかに、政治家が医療音痴であるのかよく分かる。与野党ともに。おそらく、コロナのことなどもう頭にないのではないか。もっともコロナの件は、医療団体などの要望により体制は強化されたが。
7日現在で、高額医療費の引き上げは、凍結がきまったようだが、なぜ、高額医療費を医療費削減のターゲットにしたのか知りたいところだ。

<2025/3/9 掲載>