第88回 外科医がいなくなる?2025:02:04:07:04:26

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

「このまま外科医が減り続けると、みんな苦しんで死ぬことになるで」
と「警告」するのは、先日取材したさる外科医。たしかに、以前は1か月待ちで手術が受けられたのが、最近では数か月先だともいわれる。特に、増えつづけている大腸がんなど消化器の外科の不足が著しいという。

超高齢化社会になると、おのずと合併症を抱えた患者がふえるのだから、外科治療を施すとしても、内科的知見は欠かせない。がん治療の進歩をみていると如実に表れているが、内科と外科との融合がどんどん進んでいることが分かる。しかしながら、未来においてすべての治療がAIやロボットが安全に行うようにならない限り、外科医の存在は医療において大きな柱であることは疑いがないだろう。

過日、親戚の子供が登山に行った際、その子が転倒して頭部に裂傷を負った。車で病院に運ぶべく、いくつかの病院に電話をしたが、すべて断られた。理由は「本日は当院に外科医がおりません」ということだった。結局、1時間ぐらいかけて自宅までももどり、もよりの診療所に駆け込むことになった。その地域は、登山者が多いことで有名な地域。週末や休日に「外科医がおりません」とは、外科医の不足以前にそもそも地域医療の欠陥だろう。
不足する外科医対策として、働き方改革や「男性至上主義」といわれた外科の意識改革などによって、女性医師を増やそうという試みが進んでいる病院もあるときく。

しかし、前述の外科医は「働き方改革が悩ましい」ともいう。変化が激しいがん治療においては海外の成果も取り入れた絶えざる研鑽が必要で、「勤務時間外」の早朝からネット会議を行っているという。数が増えればよいという問題でもなさそうだが。

今後、不足する外科医対策として集約化が進むであろうが、そうした医療現場の現状を正確に国民に伝え、健康管理や自己防衛対策を促すのも必要だろう。今後、首都直下地震や南海トラフ地震など巨大災害が懸念されているだけに、なおさらだ。

<2025/2/4 掲載>