第86回 たしざん、ひきざん2024:11:29:17:28:50

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

以前、在宅医療を取材していたとき、ある訪問看護師さんが「なんどか、訪問先を出禁になったことがあります」と打ち明けられた。
といっても何かヘマをしたわけではない。むしろ、病院でやっていたことを忠実に在宅医療でやっていただけのようなのだが...。病院では医療上の管理が目的だから、患者の行動は、いってみれば、「減点主義」となる。

くだんの訪問看護師はどうやって、出禁を食らわなくなったのか。「看護大で学んだ産科の妊産婦ケアを思い出した」という。妊産婦ケアは加点主義なのだという。どうやったら、妊産婦の子産み、子育ての力を引き出すのか。どうしたら妊産婦の背中を押せるのか。
あれだめ、これだめでは、妊産婦ケアは成り立たないのだという。それを思い出して、訪問看護をやりだしたら、とたんに受け入れられるようになったという。

先日、病院で栄養指導を受けた。減塩、タンパク質控えめ。肉も鳥のムネ肉、魚に限るという。ということで、パンは100%全粒粉、玄米食を始めたのだが、全粒粉のパンはともかく、減塩に玄米食、脂質を削られた鳥、魚には少々グロッキー気味となってきた。一方で、オリジナルの取組として、ヨーグルト等による腸活、一日複数回のすりおろしの野菜ジュースを本格的に始めて4カ月。血液検査の数値は日ごとに改善されてきた。

この栄養管理でいうと、病院の指導が「減点主義」、オリジナルの栄養管理は「加点主義」と考えると、両方がうまくかみ合って、効果がでてくるのだと感じている。減点主義だけでは、長続きしないだろう。
これから高齢化に伴う医療は、予防が重要視され、自己管理が求められる。医療者側も知見を広げて、管理主義から脱しないと、対応が難しくなるだろう。

<2024/11/29 掲載>