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第77回 がん対策推進基本計画2023:12:26:23:35:08
産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理
ここ数か月、弊紙の夕刊健康教室で「がん治療とリハビリ」をテーマに記事を書いている。
大まかにいうと、現在、がんの治療を開始する前、治療中、治療後と、治療の流れに沿って、というより、治療に先んじて、心肺機能を高め、治療の効果を最大限に引き出す、体力をつけることで、治療の継続・選択の幅を広げる、治療後の社会復帰をスムーズにする・早めるなどの効果をもたらすというものだ。
その説明を取材対象から聞いている最中に、ふと疑問に思い、「がん対策推進基本計画では、リハビリはどう位置付けられてますか」と尋ねてみた。
厚生労働省のホームページで検索し、今年3月に政府が決めた概要をみてみると、確かに
「2.がん医療」の一項目として記述されていた。聞くと、「項目にあげられたのも現場の感覚からいうと『やっと』という感じですよ」という。
いってみれば、がん治療を支える「患者の体力の維持・向上」に効果がある「がん治療のためのリハビリ」は「がん医療の土台」をなすものだ。
しかし実態をきくと、がん治療へのリハビリの効果、がん医療におけるリハビリの重要性・位置づけを十分認識して、がん医療を手掛けている医療機関は少ないのだという。
となると、不利益を被っている、あるいは、命にかかわる状況になっている可能性がある。
こうした指摘は、今年11月に開催された看護学会でも発表され、リハビリに熱心な医療機関とそうでない機関とでは、患者の利益・不利益に大きな格差が生じているのではないかと懸念が示された。
こうみると、がん対策推進基本計画は、全体目標を「誰一人取り残さない...、全ての国民とがんの克服を目指す」とするものの、実態は緊張感を欠くものだと言わざるを得ない。
もっとも、政府のこの手の施策は、防災でもそうだが、国民に訴えるというより、関係者への配慮のかたまりになって、何も伝わらないのが常だから、網羅的になってしまうものだが。
しかし、高齢化に伴う医療費の負担の増加が大きな問題となっている状況で、それでいいのか、基本計画のたてつけを根本から考え直す必要があるだろうと思う。
<2023/12/26 掲載>