第76回 生きる力2023:10:24:07:32:50

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

コロナの間に、50肩に悩まされていた時期があった。
ひどいときには、寝返りをうつときも激痛が走るほどだった。

結局、病院に一度も行かず、治してしまった。特別なストレッチをしたわけでもない。
知らぬ顔をしていつも通り活動していただけだ。昔、野球をしていたので、今でも体のバランスを確認するために、1㌔のマスコットのバットを振っている。そのことも、肩が痛い間も休まず続けていた。のちに、ある医療者にそんな話をすると、「私もそうでしたよ」といった返事が返ってきて、驚いたことがあった。

先日、がん患者のリハビリを行っている理学療法士にお話しを伺った。ステージ3ぐらいの手術が可能な患者には、術前にリハビリを促して、体力をつけてから手術にのぞむそうだ。
「そのほうが、術後の回復がはやいんですよ」という。リハビリといっても、肺活量の測定器を使用する運動を一日100回、自転車こぎなどけっして楽な運動ではない。呼吸が上がるぐらいの運動を毎日するという。目標値をきめてクリアしていくのだという。

これまで、最近の手術の進化で、手術の翌日から歩行訓練ができるという取材をしたことかある。ただそれは、患者自身の体力を高め、患者自身の回復力で病状を改善していくという視点ではなく、術式の優位性を示すものであった。

今後、高齢化に伴い、「脱病院」が進み、在宅での治療が当たり前の時代になっていく。ということは、患者自身の回復力を高めることがカギを握る。もはや、病気だから安静にという時代でもなさそうだ。活動して新陳代謝を促すために休息をとる、医療はそれを助けるための助けに過ぎないという、当たり前の自然の理を今一度思い起こすべきだろう。

<2023/10/25 掲載>