第74回 思い立ったが吉日2023:07:03:07:23:05

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

前回も本欄で書いたが、このところ、神戸にできた、民間運営のがん相談のフリースペースの取材を続けている。
主宰者の緩和ケア認定看護師は「来訪者自身が居心地の良い場所にしてほしい」という。

スタッフのひとりが、同所が今年3月にオープンの折、活動指針のようなものの原案を作った際、主宰者から「それはあなたがやりたいことでしょう」とやんわり再考をうながされたという。

制限があるのは開館時間のみ。相談室、リビング、図書スペース、会議室、休息スペースなどあるが、来訪者は必ずしも相談ごとはなくても、思い思いに時間を過ごすことができるように、オープンして4カ月試行錯誤が続く。

そのなかで、ある患者さんの提案がどんどん形になっていっているという。その患者さん、
ある時はおもちゃのピストルと的をもってきて、「ストレス解消にいい」といって提供したり、玄関回りを高圧洗浄機で掃除することを提案したり、かつて在籍していた塗装会社での知識を生かし、会社とこのフリースペースを仲介し、抗菌塗料を同所の壁にぬったりということをしているそうだ。

主宰者はいう。「がんと宣告されて、不安にならない人はいない。その不安感は24時間365日、いつとはなく押し寄せる。そうしたときにいつでもこのスペースのことを思い、このスペースがいつでも足を運べる、運びたい、自然に足が向く場所であることが望ましい」。
現在、ウィークデイの開館だが、働く人のために、土曜の開館も検討中だそうだ。

<2023/7/3 掲載>