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第62回 ウクライナ考2022:05:19:21:06:33
産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理
国際法の定義によると、ロシア軍のウクライナへの侵攻は、「戦争」ではなく、
「違法であり、犯罪とされる侵略」なのだそうだ。
その、一方的かつ圧倒的存在であるロシア軍に、ウクライナ政府および国民は銃を持って立ち向かっている。日本もさまざまな側面からの支援を続けており、国内でも議論が盛んだ。
そういった、支援者、被支援者の関係を超えて、われわれ日本人は、ウクライナの人たちの態度の中に何を見出すべきなのだろうか。
ひとつには「シチズンシップ」(人類の普遍的な価値観であるべき市民性)なのだろうと思う。シチズンシップとは、教育的意味合いとして、「参加型民主主義を理解、実践するために必要な知識・スキル・価値観を身につけ、行動的な市民となること」をさす。いわば人間そのものの存在価値のことなのだ。それを守るためには、時に、人間は生死を超えた「闘い」を必要とするということを、彼らは示してくれている。
実は、日本でも、ウクライナの出来事とは別に、知識人や企業経営者らが「令和臨調」なるものを立ち上げ、「おまかせ民主主義」から脱却を目指し、政治や行政におもねらない民主導の社会改革をめざすべく議論を続けている。
前回の本欄で、医療を提供される側の、知る努力、自分にとって最適な医療を探す努力の大切さに触れた。医療とは、「人間の心身を健康」に保つための世界共通の価値観だ。日本人の医療の経験は世界に医療の発展につながる。
ロシア軍と闘うウクライナの人たちのすぐ側にもウクライナの医療者がいる。先日、大阪府看護協会の会長と話していたら、「現場のナースたちの様子が手に取るようにわかるから、心配で仕方がない」と話していた。ロシア軍の侵攻前は、インドなど各国からの数千人の医学留学生がウクライナで学んでいたそうだ。
われわれはわれわれが生きる社会のなかでシチズンシップを発揮する努力を続けなければならない。そのことがウクライナの人々の「闘い」に報いることにつながるのだと思う。
<2022/5/19 掲載>