第42回 新型コロナ対策2020:06:05:05:05:54

産経新聞社 社会部記者 北村 理

気温があがり、梅雨を前にしているにもかかわらず、新型コロナへの心配はまだまだ続きそうだ。緊急事態宣言が解けても、都市部では、集団感染とおぼしき状況が続いている。
かなりの長期戦になるとはわかっていても、移動の自由が当たり前となっている現代人には厳しいものがある。
ましてや、免疫が低下する可能性があるがん治療を受けているとなるとなおさらだろう。
やはり、読者からの質問もいくつかあった。そこでいつくか調べてみた。

厚生労働省やがん関連学会、などのホームページをみると、たしかに、「Q&A」が数十項目にわたり詳細に記されている。ただ、そこにたどりつくのは容易ではない。われわれのようにあるていど、どこを調べれば、どのような情報があるのか見当がついていると別だが、漠然と不安をもちはじめた患者や家族にとってはどうだろうか。がん専門病院のホームページには「新型コロナ対策」とした項目があるが、どちらかといえば、院内の感染防止への協力を求める記述がめだつ。患者の不安や疑問にこたえようというものにはみえない。

米国のMDアンダーソンがんセンターを知る人がいたのでリポートをお願いしてみた。
同センターでは、移動制限が緩和されはじめた現時点でも、がん患者に対し明確に外出自粛を求めている。一方で、がん患者や家族らを対象に、オンラインによるグループセッションの機会を設けている。グループセッションでは、ソーシャルワーカーがファシリテーターをつとめ、テーマ別に、患者や家族らが参加し話し合うようだ。ホームページをみてみると、テーマ別(がんの種類、男女別、年齢別、英語とスペイン語など)にわかれていて、それぞれ、開催日時が指定されている。各テーマは、単純にかぞえてみると、25グループもある。
米国では、心理的なストレスは「免疫を低下させる」ものととらえており、治療と同じレベルで考えられているのだという。
また、心理的なストレスの解消方法も、実際に、がん治療中でいくつかの感染症にかかった経験のある患者のケースを本人の言葉として具体的な不安の内容と、様々なストレス解消方法とその効果を紹介している。

新型コロナでは、社会のさまざまな面で、多くの課題がみえてきている。こうした課題は新型コロナ以前から指摘されているものばかりだが、がん対策についても、患者の心理面へのアプローチを、患者会まかせにするのではなく、新たに取り組むべきだろう。

<2020/6/5 掲載>

米国MDアンダーソンがんセンターリポート記事は、こちらをご参照ください。。

世界最高レベルの米がん専門病院が実践するコロナ対策 医療コンサルタント・上野美和
新型コロナウイルスに感染した場合、がんの治療を受け免疫が低下した人は重症化する傾向があるといわれている。米国では、がん患者への対応をどう実施しているのか。同国を代表するがん専門病院「MDアンダーソンがんセンター」(テキサス州ヒューストン)での勤務経験があり、現地でがん医療のコンサルタント会社を運営している上野美和さんに聞いた。(編集委員 北村理)
2020年5月29日 産経新聞