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第41回 コロナ渦に思うこと2020:05:05:20:00:15
産経新聞社 社会部記者 北村 理
ここのところ、がんと終活というテーマで、がん治療において病院間の連携のあり様が問われており、そのカギを握るのは行政の調整力と書いた。
今回のコロナ渦で、注目されるのは、大阪府内で新型コロナ患者専用の病院が行政の介入でつくられたこと、各地で行政が医師会などと積極的に連携して医療崩壊を防ごうとしていることだ。今後の病院の役割分担と連携のあり様に何らかのインパクトになるのか推移を見守りたい。
ただ、病院のあり様は、病院だのみの住民意識、診療所の適正配分など、地域医療を支える仕組みの改善も必要だ。新型コロナと戦う医療者を応援する運動が盛んだが、一過性のものではなく、国民自身が医療のあり様を考え、行動するきっかけとするべきだろう。
今回の新型コロナ対応で、病院機能の弱点もみえてきた。院内感染のひとつの原因となったのは、感染症対策の不備だった。一部の病院では、個々の患者に対応する医療者の衛生管理(消毒の徹底)がなされておらず、患者から患者へ感染させた一因となった。
免疫学の専門家によると、感染症の減少にともない、感染症の専門家がいる病院とそうでない病院の間に格差が生じているのではないかという。実際、感染症対策を徹底をしているのは、全国の病院の2割に満たないという。
看護大で学んでいる娘にきくと、コロナ騒動の前から、大学の教員からそうした病院の感染症対策の不備の指摘があり、感染症対策の徹底を繰り返し叩きこまれていたという。裏を返せば、そうした病院のあり様に危機感を抱いている医療者が少なからずいるということだろう。高齢者の専門病院では、「人手不足」を理由に、感染者の看護師に仕事をさせていたケースもあった。増え続ける高齢者の医療の問題は、一病院の対応を責めていたのでは問題は解決はしない。
日本の医療の水準は世界でもトップクラスだといわれる。今回の新型コロナ対策でもいかんなく発揮されている。ただ、そうした、現場任せの医療体制には限界があることを、今回の新型コロナはあぶりだした。
医療は、医療技術・環境と人の生きざまとのバランスが必要だ。バランスを欠くと人は不幸な最期を迎える。そのことをがんと終活では書いた。よりよい人生を送る、それは、医療者、行政、国民と国あげて取り組むべきこと、そのことをコロナ渦は示した。
<2020/5/5 掲載>