第33回 わがままか、治療の選択か?2019:07:04:17:38:28

産経新聞社 社会部記者 北村 理


親族のがん(80歳の男性)の治療につきあって4年ほどになる。
その男性は大腸がんの初期の手術を受け、「主治医がなんでもたべていいといった」といい、退院直後に、うなぎ、同窓会のパーティでピザを食べて、腸閉塞になった。
しばらくはおちついていたが、検査で、1年ほどして肝臓への転移がみつかった。
ラジオ波の治療のあと、抗がん剤の治療もした。さらに一年後、肝臓の再発がみつかった。ふたたび、ラジオ波で治療したが、その後の検査で、効果がありやなしやなどと病院から説明をうけたといって、つれあいから電話がかかってきた。
本人(男性)は、へきえきして、治療も検査も受けたくないといっているという。とはいうものの、これまでの経緯を振り返ってみると、抗がん剤で、爪が多少黒ずんだていどで、副作用もさほどなかったし、生活に影響はほとんどみられなかった。今でもそうだ。ただ、治療をうけたくないといいながら、不安なのか、つれあいのあとばかりついて行くから、今度はつれあいが体調をくずして、救急搬送されたりもした。
不安だといいながら、病院に相談もしないので、知り合いのセカンドオピニオンにいかせた。本人の面倒がっていかず、つれあいがいった。
そこでいわれたのは、現在元気(多少のがんマーカー値の上昇はある)なら無理に治療を受けなくていいが、ちゃんと検査を受けてくださいということだった。きくと、大腸がんの手術の翌年以降、検査を受けてなかったらしい。もっとも、肝臓の治療は続けていたから、それに付随する検査で目立つ所見はないらしいが。


がん患者本人が主体的に治療を受けずに、さりとていつまでも受け身でいることに疲れて周囲を振り回すことになる。おまけに老老介護だから、つれあいの健康状態に影響がでた。本人は、このまま治療を放棄していると、そのうち食事ができなくなって...などとは全く思っていない。主治医に相談しないのに、セカンドオピニオンを受けるなんて、お金もいるし、主治医に悪いなどといっていたが、結局、セカンドオピニオンで一喝されて、当たり前のことをやってくださいと宿題をだされておしまいとなった。本人はまだぐずっているようだが、周囲は、それみたことかとひとまず安堵した。


やはり迷ったら、あるていど納得するまで相談するということの大事さをあらためて感じた次第である。
ところでわが家の「ナースの卵」は、病院実習で現場の面白さにはまって、「すごい、すごい」とメールをしてくるが、奨学金の獲得と初任地として田舎でいろいろ経験を積むのがいいのか、先進医療のある都会の大病院がいいのかでお悩みのようである。それにしてもナースの獲得競争の激しさには少々驚いてもいる。

<2019/7/4 掲載>