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第1回 堺市がん患者会「よりそい」発足までの経緯2015:11:07:20:30:08
堺市立総合医療センター放射線治療科部長、堺市がん患者会発起人 池田 恢
堺市がん患者会が発足しました。平成27年3月22日には設立記念講演会が開催され、236名の参加者が集まり、盛会のうちにスタートしました。後日、この患者会は「よりそい」と命名されました。何とか軌道に乗ったようで、結果としては短期間にここまでこぎ着けられたと思っています。ひと口に「患者会」といってもその目的や規模などさまざまと思われます。私たちの「よりそい」の場合の発足までの経緯と、その背景となった条件などについて、この場をお借りして書きたいと思います。
【背景となった条件】
1)「がん対策基本法」制定下で、大阪府はがん診療連携拠点病院を国指定だけでなく府としても指定し、さらに各二次医療圏で府、自治体および医師会など医療関係者、および拠点病院で、ネットワーク協議会を編成しています。堺市の場合、市全体が1つの二次医療圏です。また同時に医師会も「堺市医師会」と一つでまとまっています。これらは堺市が多職種であっても単一組織として活動しやすい、という背景があると考えられます。
2)堺市では「堺市がん対策基本条例」が制定され、平成25年1月から施行されています。
3)以前は府指定拠点の1つであった市立堺病院(現堺市立総合医療センター)にはがん患者会「ブランコの会」がありました。平成25年5月には堺市長の「ふれあいトーク」に参加し、市長と意見交換して、患者会の活動には側面から市が支援することを約束していただきました。などが挙げられます。
そして大きな動機づけ、推進要素となったのは、(1)市民公開講座で兵庫医科大学大松准教授の「患者会とピアサポート」のご講演を聴かせていただいたこと、(2)堺市の「公募提案型協働推進事業」に応募でき、採択されて、平成26年度から28年度までの3年間の資金支援が得られることになったこと、でしょう。
平成25年12月4日に、市立堺病院(現・堺市立総合医療センター)で市民公開講座「がん支援~がん医療のピアサポート~」が開かれ、講師の大松准教授から「『患者同士で助け合おう』~患者会活動とピアサポート」のご講演をいただきました。大松准教授のご講演は「患者会は、目的、部位の特定・非特定、規模など全国的にもさまざまであるが、規模が大きいほど、後進が続くほど、組織としてみれば安定する。またピアサポーターになって下さい」という趣旨の内容で、感銘深いものでした。
この時点で堺市二次医療圏がん診療ネットワーク協議会にも動きがありました。堺市二次医療圏には国・府指定の計4つのがん診療拠点病院がありますが、拠点病院が果たすべき役割が後述のように広汎で個々の病院単位ではやりづらい。堺二次医療圏がん診療ネットワーク協議会に参加の4病院のほか、医師会などの医療者なども協働してやろうではないか、協議会には大阪府や堺市の方々も参加していたので、平成26年度第2回のネットワーク協議会では「がん検診」、「緩和ケア支援」、「がん患者相談支援」、「診療連携パス」の4部会に分かれてやろう、という話になりました。
【堺市がん患者会の設立まで】
これらの動きの中で、「がん患者相談支援」部会では、がん情報の提供(患者サロン・カフェの運営)、患者団体の設立支援、他施設との情報交流、さらには就労支援など、多岐にわたる問題を抱えており、各施設が困っている状況なので、看護師・メディカルソーシャルワーカー(MSW)などが集会し問題解決を図りました。がん患者さんにはお互いに体験を語り合える場が必要なので、堺市全体のがん患者会を立ち上げよう、ついては市に協力を願いたいという意見が出ました。堺市で「公募提案型協働推進事業」の公募があったので、患者会「ブランコの会」、大阪労災病院、市立堺病院および堺市健康福祉局の4者が「堺市がん患者サポート事業」として共同提案したところ採択され、平成26年度から3年間、総事業費720万円、うち市委託料520万円の予算で運営が決まりました。
平成27年3月22日に「堺市がん患者会設立記念講演会」を開催することを企画しました。記念講演会を開催までこぎ着けるのにも、主に拠点4病院の関係者間で何度かの打合会を開くなど相応の努力をしましたが、お蔭で盛会のうちに遂行できたことをうれしく思います。
当日は参加者236名、堺市のほか、各拠点病院関係者も集まり、市長からのメッセージのほか、代読された挟間副市長からも意義あるコメントを頂きました。上記・大松重宏さんの「がん患者会と患者同士のピアサポート」の話、次いでご自身ががん患者でもあるタレント山田邦子さんのスピーチ「大丈夫だよ、がんばろう!」で会場は笑いに包まれました。ご自身の診察を受けた体験談をおかしく話されたほか、例えばこんなシーンもありました。会場を3つのグループに分け、春の歌「春が来た...」、夏の歌「卯の花の匂う垣根に...」と冬の歌「雪やこんこん...」をグループで別々に歌うと、それがハモるんですねえ。さすがタレント合唱団団長、見事な演出でした。(写真2枚)
アンケート集計では、大松さんに対しては「非常にわかりやすいお話で参考になりました。」、「患者会の必要性・重要性がわかりました。また、運営上の問題があることも知りました。時間的にお手伝いできるか考えてみたいと思います。」など、また山田邦子さんの講演には多くの讃辞が寄せられました。「めちゃめちゃ楽しかったです。経験したからこそ同じ立場にたってのお話、本当にうれしかったです。久しぶりに笑いました。感謝」とか、「山田邦子さんはさすがです。パワーがついた気がします。」などの感想、意見が寄せられました。当日、患者会に入会した人は当初の予想を上回り、77名を数えました。
このようにして発足し、平成27年5月31日 がん患者会設立総会を開催しました。総会では会則議案を審議し、次いで社労士関孝子さんのお話、交流会と続きました。関さんのご講演は、アンケートでは「知らなかったことが沢山聞けてよかったです。」「社会保障制度について、休職、停職、復職時の注意点、退職時の事々、社労士さんの仕事内容とても参考になりました。」などと大きな反響がありました。交流会については「患者さん方から良い話を聞かせて頂き参加させて頂き良かったと思います。元気が出ました。」など。また会の活動・運営についてもアンケートで多くの意見が寄せられました。その後、反省会を行いました。これらを参考に、運営に活かしていきたいと思います。
【現状とこれからについて】
その後・今後の活動内容は以下の通りです。
平成27年
7月5日 ピアサポート・リーダー研修
大松さんをお迎えして、課題を見つけて解決を考える方法、ロールプレイなどを実施。4拠点病院からファシリテータとしてスタッフに協力して頂きました。
9月27日 定例会(堺市立総合医療センター)
11月29日 定例会(大阪労災病院を予定)
平成28年
2月7日 定例会(ベルランド総合病院を予定)
3月13日 定例会(近畿中央胸部疾患センターを予定)
なお、アナウンスの場として、堺市の広報誌「広報さかい」に活動予定が掲載されます。会報を発刊し、そこに活動の報告を掲載しています。
平成27年5月から、「堺市がん患者サポート事業」の推進母体である4者、ブランコの会、大阪労災病院、堺市立総合医療センターおよび堺市による実務者会議が月に1度開催され、この協議の場を通じてお互いの情報が共有されるようになっているのも好ましいことと言えます。
これまでは積極的に活動してきたと言えます。幾つかの活動を企画し、実施してきたのと共に、他の患者会組織などとも交流の場を持ち、意見交換をしてきました。先行する大阪府の患者会連合組織や「がんと共に生きる会」の存在があったこと、また市立堺病院「ブランコの会」での運営経験も役だった、なども大きいと言えます。
平成27年9月現在の会員数は88名、例会の開催は2か月に1回開催を予定しています。
現在、インターネットのホームページはまだ開くことができず、事務所もいわば病院に間借り状態であります。また堺市の場合、施設単位では国・府指定の4拠点には、がんサロンはあるが、市立堺(現・堺市総合)を除いては、がん患者会は結成されていません。また、堺市からの事業資金も平成28年度以降は終了となります。自立の必要があるので、NPO法人などとして活動していく必要があると考えます。ご協力やご助言を賜れれば幸いです。
会員を募集しています。コンタクトは下記にお願いします。
E-mail: yorisoi.sakai@gmail.com
満員になった設立記念講演会の会場内(演壇上は石川会長)
勢揃いした、患者会、および各拠点病院からの応援スタッフたち
<2015/11/07 掲載>