第2回「第4回がん相談研究会」での発表と所感2015:07:20:20:07:43

中間的就労研究所 研究員 三谷勇一

「第4回がん相談研究会」に参加しての所感

2015年3月14日ハートピア京都に「がん相談ってなんやろ?~寄り添うとは~」という副題の元、研究会が開催されました。基調講演では、「ナラティブ」に注目した体験談が発表されました。「ナラティブ」とは、「語り」に注目したアプローチ方法です。「つらい」とか、「うれしい」などの感情表現にも注目します。患者に寄り添う専門職も、泣きながら、共感しながら、ともに苦楽を分かち合う覚悟が必要です。
ある心理カウンセラーは、「一緒に、水の底に沈んでしまうような感覚を感じることがある」と、がん相談をうけることの真剣さや、体当たりする覚悟の必要性を感じました。相談員に求められる能力は、知識以上に、共感する力や、時間を共有できるゆとりが必要なのではないかと考えさせられました。

発表について

本研究会では、先に第一回のコラムで紹介した「第2回がん患者就労支援意見交換会」の内容を紹介してきました。ポスター発表を行う前に、口頭発表を実施するという珍しい発表スタイルでした。これまでに何度も学会発表を重ねてきましたが、このスタイルは初めてです。参加者からの質問内容は、NPO法人 大阪がんええナビ制作委員会の活動に関心をもたれる方が多い印象を受けました。参加者は、関西を中心に、東京、北海道などの遠方の方もいます。
発表後には、「がん相談に携わる専門職のためのサロン」が開催されました。がん相談に関する率直な意見交換をする座談会のようなものです。私のグループは6人で、「就労支援」をテーマに話し合いました。全部で18グループからなりました。

がんサロン立ち上げから学ぶ就労支援の介入

「がんサロン」とは、同じ悩みを共有するがん患者やその家族の話し合いの場です。がん診療拠点病院を中心に、各地域で立ち上がりつつありますが、その開催は、始まったばかりです。ある病院では、立ち上げてはいるが、参加者は毎回2~3名という小規模のところや、メンバーの入れ替わりにより、活発な時期を維持することが難しい場合も少なくありません。今後、就労支援の対策も必要ですが、がんサロンの立ち上げも課題となります。病院が主催するがんサロンと、患者会(ピアサポーター)が主催するがんサロンに分類されます。今回の発表では、がんサロンの立ち上げを紹介するものが目立った印象でした。がんサロンも、立ち上げ当初は手探りで、うまくいかないことも多かったが、それでも続けることに意味があるという体験者の発表が印象的でした。

学んだこと、今後に活かしたいこと
    1. 長野県の取り組みでは、社会保険労務士の派遣に、県が予算をつけていることを聞きました。大阪府も働きかけてみたいです。また、社会保険労務士を病院で雇うことが難しいのであれば、講義をしていただくことにより、社会福祉士がその代役をすることが現実的なアプローチだと考えました。
    2. がん相談にいらっしゃる患者は、がん相談支援センターでなにをきいたらよいかわからないことも多く、足が運べないかもしれません。そこで、「箇条書きにて、具体的な相談内容を明示することが良い」と、結論付けました。
    3. 就労支援は、仕事のあっせんではありません。仕事を辞めずに、続けるためのサポートだと確信しました。
    4. 患者様やそのご家族様は、専門家に相談したいと思います。社会福祉士で対応できない場合は、リファー(専門家の紹介)します。事前に、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーと連携を強化している必要があります。
    5. 就労支援を行う上で、やはり医療者用チェックリストは必要です。いずれは、がん就労支援地域連携パスの開発にも手掛けていきたいです。

<2015/07/20 掲載>