第1回 「第2回がん患者就労支援意見交換会」の紹介2015:05:16:14:55:52
中間的就労研究所 研究員 三谷勇一
所信表明
現在、中間的就労研究所の研究員として退院支援のお手伝いをさせていただく勉強をしております。特定非営利法人Home doorの一部署に位置づき、円滑に就労に結び付くことが難しい方へのサポートなどを考えています。西成地区をフィールドとしながら、大阪各地で拠点を増やしております。近年の関心ごととしては、がんの患者様の就労支援の強化を考えております。国は、病院に対して、がん患者の就労支援に力を入れるべきであると表明しているにもかかわらず、全国の各病院は、悪戦苦闘をしております。まだ、取り組み始めたばかりであり、システムが出来ていません。今後、コラムでは、これらの活動を踏まえ、患者様とともに一緒になって考えていきたいと思います。第1回のコラムでは、「第2回がん患者就労支援意見交換会」を紹介します。
「第2回がん患者就労支援意見交換会」のあらまし
2014年12月6日に「NPO法人大阪がんええナビ制作委員会」が主催する「第2回がん患者就労支援意見交換会」において他職種チームによるがん患者の就労支援におけるグループディスカッションを実施しました。9名ぐらいのグループを5グループつくり、それぞれに、就労支援について意見の交換をしました。私が参加したグループは、医師2名、産業医1名、社会保険労務士1名、MSW(医療ソーシャルワーカー)2名、患者2名、その家族1名の合計9名により構成されました。「第2回がん患者就労支援意見交換会」の目的
日本では、毎年20歳から64歳までの約22万人ががんに罹患し、その5年相対生存率は57%です。治療をしながら社会生活を営むことが求められます。そこで、就労支援における介入の糸口を見つけるべく、萌芽期における就労支援の実際を考察するために意見交換会が実施されました。
意見交換会の方法
交換会の手法として、2種類の方法を実施しました。第一段階では、BS(ブレインストーミング)とKJ法的手法を活用しました。BS(ブレインストーミング)とは、脳の嵐と訳されるように、思いついたことを思いついたまま、付箋に書きだします。相手の意見を否定してはいけません。たとえ、現実的に不可能であるような突飛な意見も歓迎されます。KJ法的手法とは、BSで提出された付箋を、似たような類似概念同士、グループをつくります。そして、概念(考えるまとまり)を共有していきます。
司会・進行をしていただいた先生は、東京大学 公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニット 埴岡健一特任教授によるファシリテーターのもと、9名前後の5グループによるディスカッションを実施しました。
今回の報告は、その1グループである、大阪府立成人病センター がん予防情報センター企画調査課 井岡亜希子参事により進行されたグループのディスカッションを紹介します。
得られた結果①
BSおよびKJ法的手法の結果
•患者の意見として、「長期休暇をもらうタイミングが難しい」、「会社の上司などに告知するかどうか迷う」など具体的で切実な困りごとがでた。
•医師としては、がん相談支援センターの認知度が低いため、入院患者や外来患者でない住民が、利用できることを知られていない点を強調した。
•MSWとしては、患者会との連携への課題を提示した。
またそれらの類似概念を整理したところ、「情報の共有」、「相談窓口」などのキーワードより、「がん患者の就労に関する情報共有の在り方」に焦点を当て、議論を深めることが適切であることを導いた。また、AYA世代(若者世代のこと)の就労支援対策が弱いことが明らかとなり、年代別による対応方法を考える必要性が明らかとなった。
得られた結果②
患者のニーズを分類し、各種別による相談窓口を明らかとし、フローチャートを作成する必要性を明らかとした。今後、患者のニーズに対する構造化面接に備え、その後の相談窓口を円滑に紹介すべく、医療者用チェックリストの開発が求められる。
①がんになる前
がんへの意識が高くない。「どう情報提供すればよいのか。」
患者側からすれば、「がんの情報をどう入手するのか。」
②告知された直後
「社労士の認知度が低い」
「障害年金の手続きの仕方が分からない」
③治療と就労に向き合っている間
患者がどのようにして、自分と仕事、これからの生き方に向き合うのか」
④治療後
「今までの経験を生かした仕事をどうやって活かし働き続けるのか」
「QOLを維持しながらどう生きるのか」などの問題が浮上した。
患者と主治医、主治医と産業医の仲介的な存在が必要。相談窓口を明らかにすべき。
結論「がん患者の就労に関する情報共有の在り方」
•医師は、がんの情報を正確に伝え、治療や予後を伝える役割がある。告知に対する配慮。
•看護師、相談支援センターは、生活面に関する情報を患者から集める。患者や家族のニーズの把握。医療者用チェックリストの活用。プライバシーへの配慮。
•患者としては、どういうことを医療側に求めるかの整理。患者会の設立やピアサポートの育成など。
•行政としては、「誰が、どの役割を担うか」の定義づけ。
•マスコミによる適切な情報開示と広報。
•他職種がそれぞれの専門分野の知識を持ちあうような場が重要。
第2回のコラムでは、上記の内容を「第4回がん相談研究会」で発表してきます。それらの内容を紹介したいと思います。
<2015/05/16 掲載>