第17回「いつ反省するの?今でしょ!」2014:06:01:10:00:12
産経新聞社 社会部記者 北村 理
人口減少でまるでこの世が終わるといわんばかりに話題になるたびに、アホらしくなる。解決法は簡単だからである。各地に助産所を開設すればいいのだ。
現在、助産所での出産は1%だといわれるが、その1%のリピーター率は高い。
だいたい一人あたり3~4人は生んでいる。出産を終えたばかりの妊産婦さんにお話をお伺いすると間髪いれずに「またひとりほしい」という。なぜか。「女性でよかったという実感を助産婦さんたちが与えてくれるから」だという。
そんな話しを、「人口問題協議会」という、もっともこういう話しが似つかわしくない場でしたことがある。講師の面々は人口問題研究者。名誉教授クラスのおじ(い)さんたちである。彼らは、人口減少の仕組みの解説はするが、解決法といえば、せいぜい、子供を産んでから後のこと、例えば共働き支援ていどだ。どう子供を生むかということに問題の本質があるなんて思いもよらないようだ。
閉会直前に挙手をして、「助産所を増やせば人口減少なんて簡単に解決しますよ」といったら、コイツなにを言い出すのだという顔でほうぼうからにらまれた。そんななかで、幾人かの参加者は、そうだそうだと頷きながらメモをとっていた。子育てを終えたぐらいの妙齢の女性たちである。おっさんたちのほうを横目でみながら「ほれみたことか」という顔をして冷たい笑いを浮かべていた。閉会後、記者のもとに集まって、「そうだよねー、結局は女性のライフサイクルをどう考えるかという話しだよねー」と聞こえよがしに口々に言い出すのには笑ってしまった。女性たちがウサ(?)をはらし終わったのをみはからい、会の司会を務めた明石康さん(元国連事務次長)が「ぼくも産婆さんに取り上げてもらったくちでしてね」と照れ笑いを浮かべながら話しかけてこられた。さすが、国際紛争の最前線で様々な人々の生活をみてこられたことだけはあると思ったものである。
本来病気ではない出産の場が、(GHQのいらぬおせっかいで)自宅や助産所から病院に移ったことで、日本人の中に過剰な病院信仰をうみだす一因となり、ひいては現在のような医療費の増大につながっていることに気付いている人は多くはない。そればかりか、地域の重要な役割である「子生み子育て」をも奪ってしまった。戦後の混乱期に得たものもあるが失ったものも大きい。
なんにせよ、いまどきの諸問題を考えるには、戦後の総決算とでもいえそうな覚悟が必要のようだ。
<2014/06/01 掲載>