第4回「ピアサポートについて(2)」2014:04:27:16:51:41
兵庫医科大学 社会福祉学 大松 重宏
今回は、がん患者会の仲間の成長についてお話します。たとえば、他の同じがんを持つ体験者の話を見聞きすることは、自分自身の病状や精神状態を客観的に把握することにも繋がります。自分を客観化できることは他人である同じがん患者会の仲間も客観化できることであり、正しくがん患者会の会員が成長していく過程であります。多くのピアサポートを受領し、自分の意識が変化して、そのようなプロセスで、次の段階として自分がピアサポートを提供する立場になり、「ヘルパー・セラピー原則」という更に自分自身を高めることのできる立場に至ると考えたのです。
Ⅰ.より良いピアサポートの確立
私は、がん患者会の会員にたいしてアンケート調査を実施することで、上述したより良いピアサポートの確立のプロセスを確かめてみようと考えました。がん患者会でプログラムが充実したところには、より良いピアサポートが確立されていくだろうと考え、そのがん患者会の具体的な選定基準として、正しい情報の伝達や体験的知識の蓄積、また、同じ疾患の仲間によるピアサポートの場として、「定例会・交流会」、「相談活動」、「学習会・講演会」、の何れかを年に合計6回以上は実施していること、さらにHPやブログで活動に関する情報提供、及び会報・ニューズレターの発行を実施していることにしました。これらの選定基準を満たしたがん患者会でアンケート調査に協力してくださる団体は13団体もありました。それらのがん患者会の会員へ合計1480部のアンケート調査票を郵送しました。最終的に回答が得られたのは525部、有効回収率35.5%でした。
第一段階として、「会員の意識の変化」に最も影響があるのは、「ピアサポートの受領」、「がん患者会の種別」、「入会月数」、「参加回数(直近1年)」、「ロールモデルの有無」、「治療状況」、「体調」、「暮らし向き」の何れであるのかを統計的に分析しました。結果は、「会員の意識の変化」に関しては、「ピアサポートの受領」だけが有意でした。つまり、仲間に多くのサポートを受けたと自覚している人は、「意識の変化」が多く生まれていたのです。
第二段階として、「ピアサポートの提供」に最も影響があるのは、「会員の意識の変化」、「がん患者会の種別」、「入会月数」、「参加回数(直近1年)」、「ロールモデルの有無」、「治療状況」、「体調」、「暮らし向き」の何れであるのかを同様に統計的に分析を行いました。結果は、「会員の意識の変化」が最も影響していました。つまり、多くの仲間からのサポートを受けることが、「会員の意識の変化」を生み、その会員の意識の変化が最も仲間にサポートできる人に成長させることに影響を及ぼしていることが判りました。(図2)
Ⅱ.ピアサポートができる会員に変化することから見えて来るものは
がん患者会において、ピアサポートが会員に提供されることで同じ仲間である「会員の意識の変化」がなされ、今度はピアサポートを受けた会員がピアサポートを提供する側へと成長していくということが証明されたのです。但し、がん患者会における課題として、がん患者会で会員がより多くのピアサポートを受けるためには、その授受の場となる質が保証されたプログラムが存在する必要があります。つまり、「定例会・交流会」、「相談会」、「学習会・講演会」など、会員への情報を提供するための広報誌やHP等のがん患者会にとって重要なプログラムの充実が必要になって来るのです。また、会の中にモデルとなる会員がいることも重要です。
最後に、ピアサポートが既存の会員だけではなく新たに入会した会員へと上手く提供されるような仕組みとスキルも必要と思われます。そのことを踏まえて、私は、がん対策基本計画の中でピアサポートの重要性とその構築を検討することが謳われたのであると考えています。
<2014/04/27 掲載>