第1回 「がん患者会とは」2014:02:10:02:23:52

兵庫医科大学 社会福祉学 大松 重宏

Ⅰ.はじめに

私は、平成18年に我が国においてがん対策基本法が施行され、平成19年にがん対策推進基本計画が策定され、その基本計画には、「がん患者や家族等が、心の悩みや体験を語り合うことにより、不安が解消された、安心感につながったという例もあることから、こうした場を自主的に提供している活動を促進していくために検討を行う」といった内容が含まれていることに大きな関心を持つようになりました。 そこで、注目を集めたのはセルフヘルプ・グループ(以下、SHG)の一つであるがん患者会です。

Ⅱ.がん患者会の活動把握

全国にあるがん患者会が実際にどのような活動をどれぐらいしているかを把握するためには、がん患者会の全体数を把握しなければならないと思いました。そこで、インターネットでがん患者会を検索し、がん患者会を紹介した書籍等で全体の把握を行いました。その結果、乳がん患者会154団体、その他93団体、合計247団体については活動拠点等が把握できました(2010現在)。首都圏のように多くのがん患者会が存在する地域もある反面、県内の唯一の患者会が乳がん患者会であるような地域も存在しました。

Ⅲ.がん患者会の概要について

郵送によるアンケート調査を実施しました。設立から何か月経過したかという設問については、平均125.8か月でした。このように患者会が設立して10年以上経過していることは、2007年にがん対策基本法が制定される前から活動していたことになります。同法の制定は当事者活動の結果と言われていることにも繋がると思います。会員数は平均140.8人です。年に入会する人は平均15.9人、退会する人は10.7人でした。年に入会する人が退会する人を上回っているのは会員にそれなりのメリットがあると判断し継続して参加していると考えられます。
年会費は平均1,595円で、会費なしという団体は33団体も存在しました。事務局としての場所は92団体(74.2%)が確保していると回答し、その内訳は、会員自宅51団体、病院内20団体、患者会名義の事務所9団体でした。勉強会や講演会を開催するに際し、講師を招き会場を確保することや、会報やニューズレターを発行するための諸経費など、ある程度の予算が必要です。また、事務局として個人の自宅や病院となっているのも財政的な影響が大きいだろうと考えられます。

Ⅳ.ピアサポートプログラムの実施状況について(グラフ1)


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会員を支援するためのプログラムの実施状況は、「学習会・講演会」は111団体(89.5%)が開催しています。その回数は年に平均3.3回です。次に、「相談活動」(対面や電話、fax、Eメールなど)は97団体(78.2%)が行っていました。HPやブログでの情報提供は77団体(62.1%)が行っていました。会報やニューズレターでの情報提供は81団体(65.3%)が発行し、平均4.9回/年でした。顔を合わせての交流が基本であるSHGであっても、がん患者会のすべての会員が何らかのプログラムやイベントに参加できている訳ではないと思われます。職場に復帰して忙しい日々を送っている会員、また病状の経過が悪く参加したくても参加できない会員もいるでしょう。そのような会員にとって、会報やニューズレターだけではなく、HPやブログでの情報提供は大きな意味を持つだろうと思われます。参加したくても参加できない会員にとっては患者会とつながっているという思いは安心感を与えると考えられます。そのためにもインターネット利用は大きな課題と思われます。

「定例会・交流会」は117団体(94.4%)が開催していると回答し平均11.6回/年(中央値6.0回/年でした。「定例会や交流会」はがん患者会の主要なプログラムと言えますが、開催頻度は4~6回/年の団体と、10~12回/年の団体との2群に分かれます。新しく入会を希望した人が次の集まりまで数か月待たなければならないことは避けられるべきであり、毎月の開催が望まれるところであります。同じがんの仲間が集うことは情報交換だけではなく精神的な支えとなります。自分の先を走っている先輩会員の話を聞き、またその会員が仲間を支えている姿を見ることで、新しく入会した者にとってはロールモデルを獲得できることに繋がり意義は大きいと思われます。

しかし、ここで気になることは、「定例会・交流会」を開催していないがん患者会もあることです。全国的にインターネットを使って情報交換しているところはなかなか顔を合わせられないとは思いますが、やはり顔を合わせての情報交換、話し合いは仲間の大きなサポートとなると思います。それでは、なぜ「定例会・交流会」を開催していないがん患者会があるのでしょうか?答えは次回に書かせていただく、社会活動にあるのではないでしょうか。

<2014/02/10 掲載>