がん登録Q&A2013:05:23:22:10:49

大阪府では病院ごとのがん診療の実績を全国で初めて公表していますが、なぜ、大阪府でしか実現できないのでしょう?
それは精度が国際レベルで、住民票照会を行っている大阪府がん登録があるからです。

ずばり、大阪府には国際レベルの精度を維持している大阪府がん登録があるからです。
特に生存率につきましては、たとえば5年生存率を計測する場合、診断から5年後の時点で「存命されている」か「亡くなられている」かの情報が必要となりますが、その時点で死亡情報のない患者さんが存命されていることを確認する作業はかなりの時間と費用を要します。もっとも確実に存命されている情報を入手する方法は、住民票照会となりますが、住民票照会を行っておりますのは大阪府がん登録を含め3つの地域がん登録だけでして、ほとんどの地域がん登録が実施できていません。生存率を計測するには必要な作業ですが、その作業の大変さがうかがえます。
残念なことに、住民票照会を行った後も存命の確認がなされない患者さんはいらっしゃいます。ただ、その患者さんの全体に占める割合が5%未満であれば、信頼性の高い生存率の計測ができるといわれています。大阪府がん登録ではこの割合が1%前後ですので真の値に近い生存率が計測でき、そのことが背景となって、大阪府では大阪府がん登録のデータをもとに、病院ごとのがん診療の実績を計測そして公表することができるのです。

 

なぜ、地域がん登録が必要なのでしょう?
それは地域がん登録は都道府県の事業で、住民票照会が比較的行いやすいからです。

地域住民を対象とするがん登録、すなわち地域がん登録では、「存命されている」か「亡くなられている」かの情報を確実に入手できる住民票照会が比較的行いやすいからです。地域がん登録は都道府県の事業であり、病院の院内がん登録とは異なり、住民票照会を実施しやすい環境にあります。しかしながら、従来の住民票照会はかなりの時間と費用を要しますので、今後は住基ネットの活用も視野にいれた方法を吟味していかなければなりません。

 

なぜ、2001-2003年に診断された患者さんの数を公表しているのでしょう?

それは、がんにかかった患者さんの情報の収集と整理に約3年かかるからです。
がんにかかった患者さんの数を知るには地域がん登録が必要です。大阪府には大阪府がん登録がありますので、大阪府に住んでおられてがんにかかった方の数がわかります。では、大阪府がん登録ではどのような情報を集めているのでしょうか。がんにかかった患者さんの情報を集めているのですが、具体的には診断(どのような検査で「がん」と診断されたか、など)や治療(手術を受けられたか、など)の情報が含まれます。そのため、これらの情報の収集と整理に時間がかかり、死亡の統計より、通常、約3年遅れて公表されます。
たとえば、死亡統計の場合、2008年に亡くなられた方の数は翌年の2009年中に公表されます。一方、がんにかかった患者さんの情報の場合、2008年に診断された患者さんの治療は、診断されてからその治療が終了するまで約4~6か月かかりますので、病院から大阪府がん登録へ届出されるのは2009年になります。そこから大阪府がん登録での情報の整理が始まりますので(2010年)、2008年にがんにかかった患者さんの数が公表されるのは2011年になるのです。
このように、がんにかかった患者さんの数を公表するまでには診断されてから数年の時間を要します。なお、大阪府がん登録では現在、地域がん登録システムのリニューアル中ということもあり、2004年診断までの患者数を公表していますが、施設別の受療件数では2001-2003年に診断された患者さんの集計に留まっております。

 

がんの診療実績として、1996-2000年に診断された患者さんの生存率で十分?

実は、最新の医療の成果が反映された生存率を計測する方法があります!
がんの診療実績の指標のひとつとして生存率は重要ですが、通常の5年生存率や5年相対生存率では、日々進歩する医療の技術の成果は反映されていません。すなわち、これらの生存率は5年以上前に診断され、治療を受けた方々の生存率で、最新の医療を受けた場合の生存率ではないのです。もちろん、最新の医療を受けた場合の生存率の方が、その病院の真の実績により近いことでしょう。
では、最新の医療の成果が反映された生存率を計測する方法はあるのでしょうか。もちろん、あります。この方法は欧米ではすでに使われていますが、わが国ではまだまだ使われていません。なぜなら、かなりの時間と費用を要する住民票照会を頻回に行わなければならないからです。すなわち、今までの5年生存率であれば、診断されてから5年後の時点でがん患者さんが「存命されている」か「亡くなられている」かの情報を入手するだけでよかったのですが、最新の医療の成果が反映された生存率を計測するためには、診断されてから毎年の時点で「存命されている」か「亡くなられている」かの情報を入手しなければならないからです。
このように、従来の住民票照会の方法では限界があり、また、最新の医療の成果が反映された生存率の計測を可能にするためにも、新たな住民票照会の方法を検討していかなければならないのです。

 

がん登録のデータから、各病院の得意分野がわかりますか?

大阪府がん登録のデータを活用することで、府内医療機関については、①その医療機関を受診された初発患者の数(再発患者を含みません)、②初回の主な治療をされた患者における生存率など、診療実績がわかります。但し、居住地が府外の患者に関する情報は含まれません。

 

遠隔転移の患者数が多いということは、病期の進んだ患者さんを積極的に受け入れているということですか?

がん拠点病院の診療実績でお示ししている「遠隔転移の患者数」は、「初回の治療の時に遠隔転移と診断された患者数」です。したがいまして、「再発時に遠隔転移と診断された患者数」を含んでおりませんので、その点はご注意ください。

 

大阪府では、大阪府がん登録データをどのように活用して、がん対策に取り入れられていますか?

大阪府では、大阪府がん登録データに基づいて第二期大阪府がん対策推進計画を策定しております。今後、計画の進捗把握や評価にも大阪府がん登録データを活用し、計画の見直しを適宜行う予定です。

<資料提供:大阪府立成人病センター がん予防情報センター>