第1回「がん対策基本法」について2011:05:10:23:30:32
近畿大学名誉教授、和泉市立病院がんセンター長 福岡正博
平成19年4月に「がん対策基本法」(以下基本法)が制定されました。"がん"は現在死亡原因の1位で、全死亡の3分の1を占めています。そして、男性の60%、女性の40%が一生に1度は"がん"に罹るといわれています。すなわち、"がん"は、現在、われわれが直面する最大の難敵といえます。
これを克服するために世界中で様々の取り組みがなされています。
わが国においてもこの難敵に取り組む対策として「基本法」が制定されたのです。
この基本法では、"がんの予防と早期発見"、"がん医療の均てん化"、"がん研究の推進"の3つを基本施策としています。
がんの予防では喫煙率の低下、特に未成年者の喫煙率を0にすること、早期発見としてがん検診の受診率を50%に引き上げるとしています。これは決して容易なことではありませんが、実際目標値を掲げていることは重要だと思います。
がん医療の均てん化については、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しくそのがんの状態に応じた適切ながん医療を受けることができるよう医療機関の整備を図るとし、さらに、手術、放射線療法、化学療法などがん医療の専門的な知識及び技能を有する医師、看護師などの医療従事者の育成を図るとしています。
そして、大阪府には、国が認定した1つの地域連携拠点病院と13のがん診療連携拠点病院を認定し、大阪府は独自に30を超えるがん診療拠点病院を認定しています。それらのがん診療拠点病院が全て十分ながんの診療機能を備えているとは思いませんし、これほど多い拠点病院が必要とも思いません。市民の皆さんも、拠点病院が適切ながん医療ができる態勢を整えているかを監視して欲しいと思います。
また、基本法では、がん患者疼痛等に対応する緩和医療を早期から適切に行われるようにすることも謳われています。私は、緩和医療(ケア)はがん治療の一環と考え並行して実施するべきものだと思っています。
このコラムでは、がん医療に関わる様々の問題をとりあげ、分かりやすく解説していきたいと思っています。次回は、がんの予防と早期発見について記します。