第1回「がんと付き合うための生活基盤」2011:05:28:19:14:31
大阪南医療センター 地域医療連携室・がん相談支援室 主任 医療ソーシャルワーカー 萬谷和広
大阪南医療センターがん相談支援室の萬谷和広と申します。
私は、がん相談支援室で、患者さんやご家族さん、または地域住民の方からよせられる、悩み事やお困りごとなどの様々な相談に乗らせていただいております。その中で、やはり多いのが経済的な相談。がんになることで、その治療や療養に関して、経済的負担を強いられます。にもかかわらず、がんになられた方への社会制度は、十分とは言えないのが現状です。
例えば、先日、このような相談がありました。
「40歳代と若くして、胃がんになられた男性の患者さん。2か月の入院を経て外来通院となり、自宅での生活を送ることを楽しみにしていました。しかし、この方には、3歳と5カ月のお子さんがおられ、これから働き養ねばならない現実があるにもかかわらず、職場復帰もままならない状況で、結局、休職となりました。そこで活用した制度が、傷病手当金と高額療養費制度です。しかし、傷病手当金は支給期間に限度があり、また継続的に必要な医療費に将来的な不安は続いています。」
このように、活用できる社会制度はありますが、がんと付き合い生きていくためには、その前提として、就労や社会復帰などの社会経済的基盤がとっても大切です。社会経済的基盤が不安定であれば、場合によっては治療を断念したり、控える傾向もあるようです。その人らしく生きていくうえで、医療機関の体制整備や医療制度の充実だけではなく、社会全体の仕組みづくりも考えなければならないと感じています。
さて、がんになれば、困難に直面することがありますが、その一助になれる場所があるのはご存知でしょうか?現在全国には、388か所(平成23年4月現在)の「がん診療連携拠点病院」があり、そのすべてに「がん相談支援室」という場所があります。医療情報や社会制度の情報提供だけでなく、それぞれの方に合わせた相談も実施しています。もしお困りのことがあれば、一人で悩まず、お近くのがん相談支援室にご相談することもお勧めです。